Worldcoin概要(21年10月Tokenlab寄稿記事転載+追記)

突如発表されたWorldcoinというプロジェクトが話題になり、CT(CryptoTwitter)では賛否両論の議論が起きています。

何故話題になっているのか、どういう概要なのかを現状判明している範囲で簡単にまとめます。

  • FounderがSam Altman (Y combinatorの前CEO、OpenAIの現CEO)

  • Bloombergを筆頭に多くのメディアで報道

  • a16やCoinbase、SBFを含めた著名VC達が軒並み投資

  • 球体のハードウェアによる網膜スキャンで個人Walletを作成

  • チェーンはEthereum L2のORU

  • 目的は人類共通のデジタル通貨を作り出す事。Tickerは WLD

参加VCと投資家達

Bitcloutに匹敵する強力な布陣です。前回と違うのはFounder自身もオープンで強力という事でしょうか。ざっと$25Mの調達と報道されています。

  • 1Confirmation

  • a16z

  • Apollo Ventures

  • Blockchange

  • Coinbase

  • Coinfund

  • DayOne

  • Digital Currency Group

  • Fifty Years

  • HASHED

  • Hypersphere Ventures

  • Kenetic Capital

  • Multicoin

  • Sam Bankman-Fried

  • Three Arrows

  • Variant Fund
    +70 individuals

WLDトークンの価格と配布

こちらについてはどちらも公式の情報はありませんが、TechCrunchによればドルペッグの見込みだという情報です。また配布は8割がユーザー登録時のエアドロップ、1割がチーム、1割が投資家となっています。
個人的な印象としては全人類数十億を対象とするのに2割もチームと投資家が持っていくのはどうなのだろうかと疑問です。

何故虹彩認証なのか?

政府発行IDでも既存デバイスの生体認証でもなく、敢えて虹彩認証という非効率な手段を使うのは、確実な個人判定を行う為だそうです。データベース化されていない事を重要視しています。
生体認証の中でも虹彩認証は年齢変化等による変化が起こらない事も大きいでしょう。そして虹彩から取得する”Iris Hash”をベースに秘密鍵を生成します。更に一度使用したHashは取得済みとなり再利用は不可、且つ取得した虹彩データは削除されます。

初期認証とWallet生成からコイン配布の流れ

フェーズ1:サインアップと一意性チェック

  1. ユーザーは自分の携帯電話でSemaphore keypairを生成します。

  2. ユーザーは、ハッシュ化された公開鍵を(QRコードで)Orbに提示します。

  3. Orbはユーザの虹彩をスキャンし、ユーザのIrisHashをローカルに計算します。

  4. Orbは、ハッシュ化された公開鍵とIrisHashを含む署名付きメッセージをサインアップ・シーケンサー・ノードに送信する。

  5. シーケンサ・ノードはOrbの署名を検証し、次にIrisHashがすでにデータベースにあるものと一致しないかどうかをチェックする。一意性チェックに合格すると、IrisHashと公開鍵が保存されます。

フェーズ 2: 報酬の請求

  1. ユーザーのアプリは、ローカルにウォレット・アドレスを生成します。

  2. アプリはSemaphoreを使って、フェーズ1で登録した公開鍵の秘密鍵を所有していることを証明します。ゼロ知識の証明なので、どの公開鍵かは明らかにしません。

  3. 証明は再びシーケンサに送られ、シーケンサはそれを検証して、提供されたウォレットアドレスへのトークンの預け入れを開始します。

  4. 証明と一緒にヌリファイアと呼ばれるものが送られ、ユーザーが報酬を二重に請求できないようにします。

この2つのステップは、ゼロ知識証明によって切り離されており、ユーザーアカウントとバイオメトリックデータをリンクさせることなく、バイオメトリックベースのProof-of-Personhoodを実現しています。アカウントのプライバシーについては、プライバシーに関するブログ記事で詳しく説明しています。

WalletとSDK

WorldcoinはWalletとSDKを開発しています。
これらのSDKには最終的にサードパーティアプリケーション用のゼロ知識のProof-of-Personhoodが含まれ、アカウントプライバシーの項で説明したようにユーザーのプライバシーが維持されることです。彼等はWorldcoinの実現に向けてOrbを構築しましたが、すでに発行された証明書を再利用して他のプロジェクトにアクセスする事も視野に入れている様です。

尚、虹彩認証から生成したWallet以外にはWLDの付与は行われません。よって取引所やアプリで作るアドレスで大量のエアドロップ取得の様な事は不可となっています。

テストでのユーザー登録数とOrb Operater

テストでは30台のプロトタイプOrbを南米、アジア、アフリカとヨーロッパで試験的登録を行い、アベレージでは1台に付き一週間で700人の登録を得られたとの事です(30x700=21000/week)
計画では3年間で12万5千台のOrbを製造、配布予定です。

公式情報によると、こうしたOrbでの勧誘と登録を行う人を”Orb Operater”と呼びます。彼等にはインセンティブがあり、登録数に応じた報酬がある模様ですから、アフィリエイト報酬と同様のイメージで良いと思います。

まとめと雑感

今回得られた情報は以上です。
トークノミクスが全く書かれてない事が気になりますが、単純に配布して後はGrantや提携等で拡大していく形でしょうか?
何れにせよ書かれている事が事実であるならば、怪しい球体での勧誘活動というデメリットを敢えて選び、並々ならぬ手間と労力をかけてプライバシーと個人認証を行うという姿勢が見える印象があります。
価格が動いてしまうと初期配布者が有利になるのでドルペッグもしくは何らかのステーブル性をもたせる可能性は高いかもしれません。

最初の印象と調べた後の印象では結構イメージが変わりますが、Orb Operaterをやるか?と言われると正直しんどすぎて厳しいものがあるというのが本音です。

参考情報

2023年4月追記

Worldcoinの公式サイトではWLDトークンのDistributionつまり配布構造についての記載が殆ど見当たりません。しかし幾つかの記事を掘ると言及があります。

以下は批判的内容が主となりますが、AIの急激な成長が目前に迫った現在となっては少し異なる視点を持つべきかもしれません。トークンは手段であり目的ではない筈であり、そういった意味でも簡単に結論が出る話ではないですが、それでもあまり良いモデルには見えないというのが個人的な感想です。

まず問題視されている内容としては**Worldcoinチームと投資家達への割当が全体の20%**になる事です。株式会社を見慣れている人であればこれはむしろ遠慮した数値に見えるかもしれませんが、Crypto界隈で言えばPublic志向が高いとは言えない非常に偏った数値と言えます。

そしてトークン周りの情報が公式サイトから殆ど見つからないという点は非常に透明性を欠く姿勢であり批判に値するべき点となっています。

TwitterでもWorldcoinチームのMiguel氏とハッカー追跡で有名なZachXBT氏がこの点を含む議論をしていました。

Worldcoinについての色々な指摘はここでも批判的に書かれています。

他にも虹彩認証で作られた認証用データが本当に虹彩認証のみで生成されるのか第三者から検証出来るのか疑問があるという声もあり、これは一理ある指摘と言えるでしょう

OpenAIとSam氏は確かに偉大です。また彼のインタビューを見ても悪意を感じられません。オープンで謙虚な姿勢を感じます。でもだからといってWorldcoinが最適解なのかは良く考える価値があるでしょう。

こちらも個人的な意見ですが、カリスマ的存在とトークンの相性は基本的に良くないです。既にTwitter上でもOpenAIのSam氏が作るWorldcoinへの期待が見受けられ始めています…!

Subscribe to Shingen
Receive the latest updates directly to your inbox.
Mint this entry as an NFT to add it to your collection.
Verification
This entry has been permanently stored onchain and signed by its creator.